花活け教室「はなのみち」第十季 第7回「つき」
寒露を迎えた2026年10月8日、赤坂氷川神社の花活け教室「はなのみち」第7回が行われました。今回のテーマは「つき」です。
空気が澄み、月が美しく見える季節。講座では、日本に伝わる三度の月見や、月の満ち欠けに重ねられてきた生命の循環について学びました。
三度の月見と秋の実り

日本のお月見は、中秋の名月だけではありません。後の月見の十三夜、11月の十日夜(とおかんや)と、秋から冬にかけて三度の月見があり、「三月見(みつきみ)」と呼ばれます。
十五夜は、里芋などを供えることから「芋名月」。十三夜は「栗名月」「豆名月」、十日夜は「稲名月」とも呼ばれます。満月だけでなく、少し欠けた月も愛でてきたところに、日本の月見の特徴があります。
お月見は、月を眺め、季節の恵みをお供えし、十日夜では、田を守ってくれた神様を山へ送るなど、月や季節と交感し、収穫への感謝と季節の順行、生命の更新を願う行事でもありました。
満ち欠けに見る、死と再生

UnsplashのMarcus Dall Colが撮影した写真のMarcus Dall Colが撮影したイラスト素材
月は、満ちて、欠けて、いったん姿を消し、また現れます。その変化は、古くから死と再生の象徴として捉えられてきました。
講座では、宗教学者ミルチャ・エリアーデが示した、月と雨、豊穣、女性、蛇、死、周期的な再生とのつながりについても話がありました。
蛇が脱皮を繰り返すことや、水が潮の満ち引きによって動くこと。植物が水を吸い上げ、女性が新しい命を産むこと。月の満ち欠けは、自然の中で繰り返されるさまざまな生命の営みと重ねられてきたのです。
周囲の草木が少しずつ枯れ、静かな季節へ向かう秋。その中で月を見上げることは、終わりの先にある新しい始まりを感じることでもあります。
月という鏡

UnsplashのMike Petrucciが撮影した写真のMike Petrucciが撮影したイラスト素材
月は自ら光っているのではなく、太陽の光を受けて輝いています。太陽を長く見つめることはできませんが、月は夜空の中で、いつまでも眺めていられます。
講座では、月を鏡に見立てる話もありました。鏡が光だけでなく影も映すように、月を見つめていると、自分の内側にある感情や記憶が浮かんでくることがあるといいます。
講師は少年時代に夜道を歩きながら月を眺めていたことも語られました。夜は怖いものと思われがちですが、月と親しくなると、その感じ方も少し変わります。
屏風の前で「めぐり花」

「めぐり花」は、一人でひとつの作品を完成させるのではなく、みんなで花を活け、ひとつの空間を立ち上げていく花活けです。温室では「花の連句。共創する『まつり』」と表現しています。
講座の後半には、参加者が三つのグループに分かれて、屏風の前で「めぐり花」を行いました。それぞれ異なる背景と花器を前に、講師からは「月に向かって花をいけてほしい」と声がかけられました。


屏風の絵と月、花との関係を考えて花をつないでいく。複数の人が加えた花が響き合い、最初には想像していなかった花の景色が立ち上がりました。



講師:塚田有一
文・写真:塚田愼一
花活け教室「はなのみち」について
「はなのみち」は、赤坂氷川神社の社叢で、四季折々の草花に触れながら、季節や日本の風土を身体で感じる花活け教室です。毎月1回、1年間を通してお稽古を行っています。
教室の概要、年間カリキュラム、開催場所などの詳細は、赤坂氷川神社公式サイトをご覧ください。
※なお、現在の第十季(令和8年4月〜令和9年3月)の参加者募集は終了しています。

