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まえばしガレリア

周りは夜の街。元々映画館だった場所の跡地だといいます。そう言
われれば、壁面緑化のパネルはスクリーンサイズのユニットで、いず
れ緑に覆われ、緑のスクリーンが浮いているように見えるのがコンセ
プトなのかもしれません。一階には現代アートのタカイシイギャラリ
ーや小山登美夫ギャラリー他が入っていますので、外構はガレリア感
が出るように、抜け感を大事に植栽しつつ、表からもギャラリー内か
らも裏表で変化を楽しめるよう意識しています。


 上層階はマンションで導線のズレが複雑さをもたらし、緑がところ
どころ目に入って道行きを楽しくしています。平田さんの設計は、風
景が思わぬところに現れ、展開し、繋がっていくので、その点は日本
庭園や露地のようにランドスケープが遠近様々、入れ子状態となるの
が魅力です。
 壁面は自動灌水になっていて、一階の植栽帯の何ヶ所かにオーバー
フローした水が流れ落ちてゆきます。地面からも何種類かのつる植物
が巻き上がります。囲われた中庭に入ると緑のスクリーンが続き、見
上げると上層階のテラスにも緑が見えます。面のボリュームと立ち上
がるボリュームが混在します。地元の庭師さんたちと一緒に造って行
くのが豊かな時間でした。前橋の気候は過酷ですので、お手入れもと
ても大切です。


 ガレリアの名前の通り、季節の巡りによって、花や果実も建築を巡
ります。訪れる昆虫や鳥も巡るでしょう。東は春の庭、南は夏、西は
秋、北は冬、大きくはそのように分け、バランスをデザインしていま
す。また、前橋出身の萩原朔太郎の詩から拾った植物もいくつか植え
ました。トーンとしては白のほか、紫や桃色を朔太郎の詩の印象から
も選びグラデーションを持たせました。赤城山に見られる躑躅を多く
入れたり、季節ごとに色彩が賑わい、東西南北で春夏秋冬、季節の移
ろいを建築が纏い、街へ滲み出していくでしょう。紅葉の季節は特に
綺麗だろうと思います。


 夜の街の看板が並ぶ歓楽街と一体どう交わっていくのか、アートと
街と緑の住まいの混淆がこの先楽しみです。