2023年1月7日。新暦人日の節供。師走満月。
10回目の伝芭 sansa座。
お正月に近すぎたせいか参加者は半分だった。今回は主に万葉集の歌を引きながら、若菜を摘み、羹あるいはお粥を作っていただくことの意味を考えた。新年の「初子の小松引き」との関係。「子(ね)」はねずみのことで「子孫繁栄」につながるが、根ともつながり、良い根を引くことは縁起が良いということで小松の根を引く風習がある。雪間に顔を出す春の七草も、根をいただくものが多いことに気がつく。あるいは勢い盛ん、タフなもので、いずれも薬効が高い。せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。雪の中、若々しい緑が早春の陽光にキラキラとしているのが目に浮かぶ。
花材も七種にした。若菜ではないけれど、旬の花材。旬のエネルギーをその手で活けて、飾っていただく。栄養補給の仕方は食べることばかりではない。手触りや、香りや、みんなといける時間がご馳走だと思う。空間も陽の気で満たされる。
昨年の冬至の隣町珈琲さんでの鼎談「植物から読む『源氏物語』」(安田登/祐真/塚田有一)で感じたことをまずお話しする。それに続いて同じく「若菜」について。「若菜」はまさに若菜に対する往時の心根を下敷きに物語が組まれている。それだけに何やら光源氏の凄まじさも感じられるのだろう。
お菓子は福光屋さんの酒瓶最中と、上の写真の「辻占」というお菓子。おみくじが中に折り畳まれている。食べて初めて知った。辻や橋の上などで、黄昏時(逢魔時)に唱え言をしてから柘植の櫛を鳴らし、鳴り終わった時に聞こえてくる道ゆく人の声などで、占いをする。そうした風習にあやかったお菓子。ひとしきり出たおみくじのことで座は盛り上がる。本来は三つ食べて、出てきた言葉をつなげて自分なりに解釈してみるものらしい。
松を例に常磐木のこと、歳寒三友、五清、四君子、双清、三白など、松竹梅の話や、今回の花材それぞれのお話の後「めぐり花」する。
器はDomaniのひび割れた鏡餅のような陶器。ちょっと花が留まり難いので、花留めは仕込んでおく。縁起物の日陰かずらをあしらう。
めぐり花の時間、sansaさんが音楽をセレクト、レコードをかけてくださる。今回はhttp://Aspidistraflyの ”A Little Fable”。これが若菜摘みにもぴったりで、七種の花をめぐっていける花に軽やかさをもたらしてくれた。