Flower(花の為事)

花の座 伝芭 sansa座 『女郎花 竜胆 吾亦紅 アナベル 蓮の実 苅萱 小菊』

花の座 伝芭 sansa座。8月のタイトルは『女郎花 竜胆 吾亦紅 アナベル 蓮の実 苅萱 小菊』。メインテーマは重陽の節供だけど、歳時記などを参考にそれぞれの植物の文芸的かけらを掬い、それらの花をそれぞれの身体で活けることで植物と浸透し合う感覚に馴染んでいってもらう。暦のことも外せない。生命指標としての24節気72候は手すりになる。今自分がどういう時空をかっ飛んでいるのかと言うことだ。例えば今は立秋の『蒙霧升降(ふかききりまとう』という候にあたるが、約半年前は雨水の『霞始靆(かすみたなびく)』だった。野で見る吾亦紅や女郎花や竜胆も、自分も蝉も雀も半年前は半年前の姿でその時空を潜っている。そうしてここで植物を媒として座を結んでいる。

花の連句「めぐり花」は、中世の花合わせのように座の中で途方もない出会いをほんの一瞬巡って結び、切り結ばれ、結ばれたそばからもうほどけていく。今回はベースとなる馬酔木を僕が立て、それにみなさんで花を合わせてくれた。みなさんに話をして、活けてみて実感できることが毎回沢山あるけれど、今回だと例えば吾亦紅で紹介したこんな句「吾亦紅風に言葉を置くやうに 佐藤博一」とか「つまむことこの世にいとし吾亦紅 森澄雄」などの句を、活けた花から実感できた。それぞれの花の持つ物語は膨大だ。テキストはその見方づけをほんの触りだけ示す。後は集ってくれる皆さんの身体が感応し、それぞれの中で植物と相互浸透し、やがて醗酵していくのだろう。めぐり花するときの音楽はsansaさんがセレクトしてくださる。今回もとてもしっくりきて丹田に気持ちよかった。(写真;Shinichi Tsukada)