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花の座 伝芭 SANSA座 第1季結び「雛祭り 桃(紅白)、辛夷、椿、菜の花」

2023年3月4日、花の座 伝芭 SANSA座第1季の結びの日。花の連句「めぐり花」は12年前の3月11日の震災を機に生まれた方法。花の祭り、季節のめぐりを愛でる祭り。人の巡り合いを、人と場と、人と花との結びを祝う。花と混じり、花と歌う祭り。震災と結びついた以上、雛まつりとは消えかけた面影を辿り、失われしものを想うとき。

雛祭りのこと、桃のこと、菜の花のこと、椿のこと。そして漱石の『草枕』がちょうどこれからの春が舞台で、菜の花や椿の描写が鮮やかで深いので取り上げてみる。

器は菱餅色。

紅白の桃。桃の蕾は丸くて愛らしく勁い。そうして笑うと華やか。

参考にさせていただいた書物。山道を歩きながら人の世の生きづらさを引きずったままだった主人公が、足を踏み外し、ちょうど良い大きさの石にストンと尻餅をついて、ふと雲雀の声や菜の花の黄色を遠くに見初めて、ようやく「非人情」の世界へ導かれる。遠くの山桜の霞から菜の花の黄色が鮮やかにまなかいに広がる。

今回かけてくださったアルバムはVashti Bunyanの”Hart’s Leap”(牡鹿の跳躍)。白い鹿は神様の使い。森の奥へ勇者を導き、英雄として蘇らせるとされる。http://www.inpartmaint.com/site/10613/

白い鹿、しろたえのお菓子。
漱石の『草枕』の椿は妖しく、沼の底に幾代も積もっている情念のようでもある。いけばなは、いけにへでもあり、いきかへり、でもある。
手つきに1年分が現れる。
間が見えてくる。
1年めぐった皆さんに、手渡す「トロフィー」はイースターの魔法の杖。それぞれの雰囲気に合わせて束ねる。リトアニアで見たものを真似る。キリスト教の「棕櫚の日曜日」の棕櫚が原型らしいが、北欧には棕櫚がなく、日頃育てて保存していたハーブ類などをドライにしたものを束ねて飾ったのが始まりらしい。日本の「削り花」などに似ていると思う。イースターらしく、春を呼ぶ鳥の羽や、イースターラビットに肖ったラグラス、実りの再生を願う大麦などをあしらう。春、つまり若返りの魔法の杖である。雛祭りも、若さを願い、春の再来を祝う祭りだ。

小さなトロフィー。

皆さんへのカード。