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花の座 伝芭 sansa座 『檜扇 桔梗 花魁草 芭蕉』

2022年7月23日。土用に入ったので方位を意識した器の配置。四方に置かれた花器に「めぐり花」していきます。花材は檜扇、桔梗、花魁草、芭蕉でした。夏らしいテーマが隠されています。夏休みで日本滞在中のリヨンに住む友人のダンサー梶原暁子さんがめぐり花の花活けに混じって、出来上がったその中で即興で踊ってくれました。花を活ける姿はみんな綺麗で踊っているようですが、こうして花と対話しながら一緒になって行く姿を見るとまだまだ生命同士繋がり合う可能性を感じます。花が喜んでいる事もみんなで目の当たりに。こちらもまたさらに嬉しくなっていきます。

これまでは、真ん中に器を置いて、まわりを巡って活けてもらったけど、今回は活け手が真ん中に立って、四方に置かれた器に活けていく。北に向かうとき、南に向かう(北を背にする)時、東、西、、、その身体感覚。それぞれ見るとそれとなく方位が感じられる花となっている面白さ。

花の命を扱う手つき、自分の命を扱うことと同じだと思う。日本語の「しぬ」は植物が水分を失って「しなふ(萎ふ)」であり、「死」とは違う。水を揚げれば復活する。それを表す言葉が「活く」。
桔梗と檜扇

即興がはじまる 直立し軸を持つもの 切花は切られることで根から離れ、浮世の人と近付くのかもしれない。 

「踊る」は「をどる」で、足に力をこめて跳び上がること、とされる。この言葉は「をつ」つまり「変若」(=魂が若返ること)や「をち」(遠いこと)と繋がっているように思われる。「をとこ」や「をとめ」が、霊が立ち返って若い男となる、新しく受霊して乙女となる、そうした信仰と通じているようだ。「踊」も「桶」という字も、「通」じるの旁を当てられており、それらはどこか遠くや、魂の再生のポイントとトンネルを抜けて通じる、繋がる力を持っているのだろう。今回の即興のダンスは「舞ふ」に近いかもしれないが、舞うも旋回しながら「無」となり、どこかと通じる、あるいは依代となることでもあるから、ダンスという振る舞いは花そのものと感応していく、いつか花になっていくものなのだろう。

踊りを終えた彼女はさまざまな境界をほぐしてくれていた。水を揚げ、花も開いて午後の陽を受けて嬉しそうだ。