この日最後のプログラムはアルヴォ・ペルトの『鏡の中の鏡』。静謐で、聴くもののどこかを震わせる、どこまでも深く、扉が少しずつ開いていく感じのする楽曲。吉原葉子さんのヴァイオリンと五味田恵理子さんのピアノの演奏は静かにはじまった。青い木漏れ日の照明の中、奏でる音は情感を増し、その時がきた。花がゆっくりとお二人の方を向いて動いた。音と光(花)がまるで大きな両の手のひらのように空間全体を包んだ。会場の小さな子も大人もみんな慈しみに包まれた。企画者の「音と光」さんが目指す形が生まれた瞬間だった。宙に浮いた花はふわりと動き、お二人に笑いかけるようだった。案内にもあったクララ・シューマンのような女性の魂は、きっとこうやって受け継がれていくのだろう。
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