赤坂氷川神社花活け教室「はなのみち」。コロナ下にもかかわらず、手を挙げてくださった9名の生徒さんたちと、昨年9月からイレギュラースタート。8月の今日が修了日。最終回はミスってタイトルに「初空」という季語を使ってしまったけど、区切り、そして晴れやかなスタートとしてもらうにはちょうど良かったかも。9名皆さん揃っての完走を絵にした修了証を手渡しました。1人ずつの感想を聴くと、それぞれの受け止めが素晴らしく、こちらが洗われるようだった。家に戻って落ち着いたら、じわっと淋しさが。。。大変な世の中だからことさらに大事な場だったのだ。赤坂氷川神社という場、宮司さん、禰宜さん、権禰宜のみなさん、ありがとうございました。
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赤坂氷川神社 はなのみち四季 修了の皆さんへ
秋から人数を絞って始まった四季はなのみち。
八月三日、東京では数度目の緊急事態宣言下での最終回になりました。(そういえば3季は、最終回が無くなってしまったのでした。)
一年間不安は去らない状況だったにも関わらず、積極的にご参加いただき、花を通じて交わし合いができる稽古は、流されてしまいそうな日々の碇となりました。七夕には一年先送りになった「七夕花飾り」も実現しました。
「花手水」もこうした時期だからこそのお稽古となり、全員にご参加いただくのは難しかったとはいえ、リアルな場は最も良い稽古の場所だったと思います。マイナスに見える出来事から、ヤブカラボウに生まれるチャンスもありますね。
活けているとき、参拝なさるみなさんが笑顔になってくださるのが何よりの励みになります。時には花に手を合わせてくださる方もいらっしゃいます。「活け花」というとき、花そのものや活け手が生かされるだけではなく、見てくださる方も生き生きとした心持ちにさせ、その方の心の中で活きる、そんな意味を含んでいるのだろうと思います。
立秋まであとわずか。夏の土用も終わります。
太陽系全体で見れば 地球が土星と結ぶタイミングです。
このコロナ下でずっと思っていたことは“stay home“の”home”について。
人を意味する”homo”はラテン語の”humus”からきているそうです。「土」という意味。聖書でもアダムは土から神によって作られたとされます。そして”human”も“home”も同じく”humus”が語根だとされているのです。ということは“stay home”の”home”は「家」でもありますが「故郷」もっと奥に広がる「原郷」あるいは「理想郷」ということにもなるし、我々が立つ母なる「大地」や「海」のことでもあるし、「土壌」でもあり「地球」そのものであるとも考えられます。太陽系ということで言えば、太陽や月も母なるものとして”home”ですし、そして我々の「身体」も、身体を支えてくれている微生物や細胞にとってみれば “home”で、ひとりひとりの「魂」の仮の宿としての”home”でもあります。ダイナミックな生命史、宇宙史の先端をそれぞれが歩んでいます。
時に「花綵列島」という言葉を使い、風土が人の身体や情緒を育んできたはずだと繰り返しお伝えしました。風土あってこそ、茶道や和歌や武道などとともに、暮らしのそばに深層意識という原郷”home”あるいは”core”に触れる方法を残してくれました。浴びるほどに、歳月をかけじっくり向き合うことで、誰もが自分の道を見つけることができると、繰り返しその行為を続けられるように、型を用意し、場を整えてきました。型があるからこそ、今を、溢れそうな何かを載せることができ、そこからこぼれ落ちるものもわかります。こぼれるものにこそ、意味があるのかもしれません。
「真を立てる」と言います。真とは「まこと」。花を立てることで、その人の本来(誠)を見つける、もしそれがくすんでいたり、曲がっていたりしたら、立て直すことです。直き、明き、清きものに触れ、縁を感じて出逢いを喜ぶこと。「立てる」という言葉はお茶も点てるし、柱も立てる、蹴鞠でも垂直に鞠を蹴り上げ、それを持続させる、人の時間を一旦絶ち、神話的時間が顕れる。その時初めて依代としての「立花(たてはな)」となります。
花を立てることは、占いでもあります。
これからも琉球の古謡に語られるように「世よ直れ」と、願いを込めて、花を立て、活け続けたいと思っています。そこに、「今」も「ここではないどこか」も、調和する世界を支える小さな柱として「世界樹」が一瞬でも立ち上がるからです。
最終回のタイトルを「立秋 初空」としたのは、季語としては間違っているのですが、みなさんの再出発として、そのような晴れやかな日を祝うのにちょうどよかったと思っています。秋が立つ日に新たな出立を喜びましょう。
みなさん、お元気で。良い風が吹きますように、願っております。
2021・8・4
はなのみち講師 塚田有一