Flower(花の為事)

CO.YAMADA UN “BODY GARDEN”映像版 植物美術

山田うんさんとの初仕事でした。短時間のやりとりをしたのみ、温室が用意した植物の空間に、あまりに見事に即興で合わせていくので、一体どんなふうにイメージして稽古をしていたのか、とても不思議。

コンテンポラリーなのだけど、古い神話を見ているような気がしてくる。植物と人の古代性。まだお話ができた頃の。

ヲノサトルさんの音楽と映像によるインスタレーションダンスという試み。探究は始まったばかり。人と植物。目は芽だし、鼻は花、話すことも花、葉のようにヒラヒラする手のひら、歯は葉、刃、原っぱのような腹、耳は実実、胚葉や肺葉や側頭葉、脳幹、体幹、血管や神経系は根にそっくり、毛はまるで植物のように生えている。切られたことで植物は、人に近づいてくるのかもしれない。それをギフトとして受け取り、ひと時を大切にし、大切に送られる。植物と人が光の中でたゆたうインスタレーション。本当は血が繋がっている、太陽の元で生き、宇宙を呼吸するるものとして。

植物の愛によって包まれ、植物的身体を内蔵する人。静かに、立ち止まれば他のものたちの声がもっと聴こえる。コロナは使者なのかもしれない。

Body Gardenの植物
かつて植物と動物は一つでした。およそ22億年前に分化が始まったとされています。同じ海から生まれたもの同士で、植物の方が先に地上に現れています。植物は 長い時間をかけて自ら「大気」という海を産み出し、大気の中で子孫を残す方法を 模索しました。シダや苔は胞子で雨や水を頼りに繁殖します。木の子も同じですが、彼らはバイオエアゾルと言って、軽い胞子を空高く飛ばして雲の核となって雨となり戻ります。やがて花をつけた植物は、片割れとして動物を生み出します。植 物と接していると、もしかしたら植物を中心とした環世界の一器官ではないかと思 うことがあります。人の内臓器官を解剖学者の三木成夫は「植物器官」と呼びまし た。主に消化と生殖を司ります。脳も含めて神経系や筋肉は「動物器官」です。片割れと片割れ、遠く隔たったようでも、実は分身どうしなのかもしれず。半神半獣 ならぬ半花半人の”Body Garden” 。新たな対話が人花一体の流動する活け花を生ん でくれそうで楽しみです。


以下、主な植物のリスト。
*アテ (お化けのように吊った枝) 檜(ヒノキ)と翌檜(アスナロ)の中間種とされる。 葉の鱗片が緻密で厚い感じ。操(みさを)という言葉があるが、杉、檜らの常 緑針葉樹の清々しさと、厳粛さを「みさを」といった。「さを」とはもともと「さあを」で聖なる青をいう。


*ヒカゲカズラ
常緑の羊歯の仲間。文字通り山の森林などに生え、唐草模様のように長く伸びていくことと、常緑である、生命力が強いことなどから長寿や繁栄の象徴とされる。大嘗祭の際、新たな天皇の御代の永続を願い、お供えされた植物の一つ。卯杖などの行事に用いられ、長ければ長いほど良い。吊り下がるものは天からの恩恵が降りてくる依代ともされた。古事記の「天岩戸」の項で、天照を誘い出すためにアメノウズメノミコトが踊るが、そのときタスキにかけたの がこの植物とされる。アメノウズメは、猿田彦とともに芸能の神とされるの で、皆さんの遠祖とも言えます。他にマサキカズラを頭に巻き、ササを手に持ったとされます。植物は神をおろす依代(神の寄りつく仮の家)となり、人はそのとき植物の霊力そのものとなり天と繋がります。


*アロエ 俗に「医者いらず」と呼ばれるほど薬効がある植物として有名で、健胃や便秘 薬として、生葉の透明な多肉質部分を食したり、乾燥葉をアロエ茶として飲用 したりするほか、水虫、火傷に生葉の汁を外用したりする。


*ススキ 「ススム」「荒(スサ)ぶ」「凄まじい」などと語根が一緒。凄まじい勢いで広がる。地下茎でも種でも広がる。たくさんの名を持つ。古来身近な植物、茅葺き屋根の材料でもある。
お月見に捧げられるのは、イネに先立って穂が出ることで、お米の実りを予祝 すると見立てられた。また、竹などと同じように中空構造であり、竹にかぐや姫や歳神様が宿るように、すすきには月神が宿るとされる。月は植物と同じようにつごもりで一度死んで再生する。植物は冬は枯れたように見えるが春になるとまた復活するので、類同と見做される。月はまた、満ちるものの象徴であるから、月の神は概ねどこでも大地の神でもあり、多くは女神。ススキによって月を招き、月を宿すことは稔りを助けるとされる。
(本番の日は「後の月見」と言って、十五夜に続くお月見の日です。十三夜の 満ちる前の少し欠けた月を愛でます。栗名月、豆名月とも言います。)


*芭蕉(大きな葉っぱ)
芭蕉布の糸をとる。芭蕉はバナナのような実がつくが小さくて食べられない。
能に「芭蕉」という演目がある。大きな葉を女性の着物と見立て、芭蕉の精を登場させている。「山河草木悉皆成仏」。心がないとされる草木も成仏する。そのための経文がある。縄文以来のいわゆるアニミズムを背景に広く日本受け入れられ発展した仏教のこの教えを芭蕉の精と庵の僧に語らせる。松尾芭蕉の庵は「芭蕉庵」。草庵に植えた芭蕉が立派になったため、弟子たちがそう呼び始めたところ、戯れに自らその名をつけたことで松尾芭蕉が誕生したらしい。


*ニュウサイラン 竜舌蘭の仲間。ニュウサイランは、マオランとも呼ばれる。マオリ族がその繊 維をとって衣服やカゴ、ロープ、船の帆などによく用いたため。かつて欧州や 遅れて日本にも繊維を取るため輸入されたがあまり発展せず。現在はもっぱら 観賞用に作られる。葉の形状や葉色をアクセントにするオーナメンタルグラス として、ガーデン素材として重宝される。


*ツルウメモドキ (ぶら下がった黄色い実。開くとオレンジ ) 錦木の仲間。梅に似たウメモドキがあり、それに似た実をつける蔓性の植物。 広く山野に自生する。
*真弓(まゆみ)桃色の実 ツルウメモドキと同じく錦木の仲間。紅葉や実を楽しむ。桃色の果皮が裂ける と鮮烈な赤い実が顔を出す。有毒。 材質が強い上によくしなる為、古来より弓の材料として知られ、名前の由来に なった。この木で作られた弓のことや、単なる弓の美称も真弓という。


*八手(やつで) 和名は、葉は掌状に深い切れ込みがあることに由来し、葉は実際には8つに切れ込んで9枚に裂けているものが多い。ヤツデの別名(地方名)はテングノハウ
チワ(天狗の羽団扇)という。冬に花を咲かせて翌春熟す。実生で庭などによ く芽生える。 冬の花は昆虫たちの貴重な蜜源。暖かい日にはたくさん虫がやってくる。ウコギの仲間。
*蝙蝠ラン、ビカクシダ 着生植物。その姿は独特で、葉には2つの型がある。1つは盾状の葉で、樹木の 幹に沿って広がる巣葉という。巣葉は上から落ちてくる落ち葉を集める役割があ り、それによって肥料分をその内側に確保する。もう一方は2叉に分枝しながら 細長く伸びて垂れ下がるもので、普通葉という。普通葉は光合成と胞子生産を 行う。和名は麋角羊歯で、麋角はヘラジカの角のことであり、普通葉がシカの角に似ていることによる。