「花の座 伝芭」では、植物と人の関係がもっともっと細やかで濃やかだったことを肌で感じることを大事にしています。彼らはずっとそこにあるのに、遠ざけてしまったのは人の方。
芸術が個人主義的なものになり下がっていることももどかしく、本来もっと共的で共に高揚する見えないものに対する祈りにも似たものだったのではないかという想いから、花の連句「めぐり花」を経験してもらうことを主としています。2022年4月から赤坂のsansaさんで始まった座を振り返ってみます。(2023年分は後程追記予定)
今年一年で一つ分かったことは、我々は壮大な虹色の龍と共にあるということです。それは植物の息吹と混ざり合い過ごすことで見えました。このことは「みどり」の秘密でもありますが、常に光の賜物として生命は顕われ、虹彩を放っています。植物も動物も鉱物も、切なくも美しい時の贈り物の中をメタモルフォーゼを繰り返し、混淆しながら駆け抜けていく姿が見えます。
こうした座を花綵列島であるこの国の至る所で結んでいけたらと願っています。
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*sansa座 vol.1は、4月23日。桜も終わり。初夏を感じる時候。
タイトルは「つつじ、うつぎ、あやめ」。端午の節供に因んだお話と花材だった。
躑躅の異界性。卯の花の「卯」の二面性、あやめの綾、、、めぐり花で織り出される別の世。
*Vol.2は5月26日「あぢさゐ 芍薬 しもつけ」。今回は2チームに分かれて「めぐり花」。
ひとチームは壁に設けられたニッチに、もうひとチームはカウンターの上に。
あぢさゐの「あを」、芍薬の気品、しもつけの繊細。5月の終わり花嫁のもつブーケのような花となる。
*夏至を過ぎた6月25日のvol.3は「ゆり 七夕」と題す。
花材は「竹島百合、蒲、蛍袋、唐糸草、ブルーベリー」
七夕の星祭。花は地上の星である。星座のように花を活ける。花は文である。恋人同士手向け合う。
*7月23日vol4.「檜扇、桔梗、花魁草、芭蕉」。今日から大暑。夏の土用。花材は炎暑らしく「火」にまつわるものにした。
今回は四方に花器をおいて季節のめぐりを祝う花を活けた。
リヨンでダンサーとして活躍する友人が帰国していたので「めぐり花」を体験してもらい、しかもその場で即興で踊ってくれた。途端に花と人の身体が響き合い、混ざり合い、場が荘厳される。
8月20日vol.5は夏も終わりに近づいた「処暑」。タイトルは「女郎花 竜胆 アナベル 蓮の実 吾亦紅 苅萱 小菊」。秋という甲骨文字のつくり。秋の七草、重陽の節供のことなどを話す。
今回はまず塚田が真として馬酔木を立て、その後皆さんでめぐり花してもらう。
*vol.6は9月17日。
「お月見 芒 藤袴 白朮 雄山火口 杜鵑草 鳥兜」
月の話。白の話。
音楽はグレン・グールドのバッハ。
vol.7は10月22日。
「あか もみぢ ブルーベリー、雪柳、乱れ小菊」
Vol.8は11月12日。「ふゆのはじまり〜上溝桜 満作 嵯峨菊 磯菊 竜胆」
皆既月食が11月18日にあったので月食のことから。紅葉も見納め。良寛の歌。いよいよ冬へ。
今回は「二人めぐり花」をしてもらう。パートナーと順番に活けていく。
紅葉もまた虹だ。緑の虹からはじまり、紅葉という虹で終わる。植物は光から生まれ、光へ帰っていくのだ。
12月3日は2022年の最後 vol.9 「ミタマノフユ 樅 ブルーアイス 栂 山こうばし 南天の実 柚子」
根元を揃え、花を奉る形で花曼荼羅を作ってみる。クリスマスリースや茅の輪と同じで、めぐる季節に感謝と祈りを。
クリスマスもお正月も冬至由来。リミックスの冬至飾り。