続いて伊勢半の島田さんに「紅について」の講義をしていただく。
冬へと季節が移ろう時期。太陽が傾き、秋と冬のあわいの姿が入り混じる最も美しく、儚い季節。照り映える紅葉を「虹のよう」といった人がいる。太陽のひかりがひとみを通して見せてくれる世界。緑の若葉の芽吹き、そこにはそもそも千の色が揺蕩い、やがて色とりどりの花を咲かせる。秋の終わりの紅葉はその虹がまた光へと帰っていくプロセス。
本紅は、その生命の色のうつろいの神秘をこうして見せてくれている。
女性に限らずお化粧していた時代、この儚くも艶やかな紅という光の凝縮は、人々を虜にする魔力そのものだったようにも思う。
こうした奥深いものが身近にあるということは所作とか存在そのものが情緒を深くしてくれて、尊い。