屋上に立っていたら、海の底にいるような気持ちになった。
青山墓地のある斜面の麓に立つ3階建てのビル。
ここから見上げる風景は、かつて海だった頃の、渚にいる生き物たちの視点。
かつてはリアス式海岸のような入り組んだ入江だった筈。雲は虹色で、波の音すら聞こえてきそうだ。
谷の底の建築事務所、別別の工法でそれぞれ建てられた3階建ての2棟を接続したものらしく、お互いの階段のところで接続され、繋がっているも、ちょっとずれている。その二つの階段に沿って、気が上り下りするようにとイメージする。
二つの棟を陰陽、日月に見立て、上昇と下降、谷底の溜まりやすい気を緑で攪拌する。見えない波を、寄せては返す波打ち際を作ろうという計画。
日月照応、流動する上昇と下降のイメージは、建築家が建物に帯を垂らして植物を絡ませたいというスケッチから発想したもの。
室内には綺麗なカーテンが垂れ、緩やかに揺れる仕切りとなっている。布は元々植物から取られた糸を編んで作られる。色だって元は植物から採られ、染められている。切ったり、織ったり、編んだりして、面ができるのだから、植物と相性が良い。
空間にこれだけ多様な植物が入れば、意識の中にさりげなく彼らの色や芽のとんがりや、葉の微細な動きや照りや、息吹が入ってくるだろうし、谷底から見える樹々や道端の植物たちとの連続性が、日々を更新していってくれると思う。